アスベスト(石綿)の特徴や被害についてご説明します。
アスベストの種類と特徴
アスベスト(石綿)は、天然に産出され、特有の繊維構造(アスベスト構造)を持つ一定の鉱物の総称です。
アスベストの語源は「不滅」を意味するギリシャ語で、日本では石綿(いしわた、せきめん)と呼ばれています。
主なものとして、クリソタイル(白石綿)、クロシドライト(青石綿)、アモサイト(茶石綿)、アンソフィライト、トレモライト、アクチノライトなどがあります。
アスベストは、細いもので太さが0.02㎛(髪の毛の5000分の1)、大気中に浮遊するもので1㎛前後から5㎛程度(髪の毛の100分の1)と極めて微細です。
また、劣化せずに半永久的に存在し続けるため、一度、体内に取り込まれたアスベストは排出されにくく、不断に細胞に対する悪影響を及ぼし続け、様々な病気を引き起こします。
アスベストの用途
アスベストの用途は極めて多岐にわたり、生活環境の至るところで用いられてきました。その用途は3000種類を超えると言われています。
主なものとして、
①建材(スレートボード、けい酸カルシウム板、スレート波板、屋根用スレート、防火・防音用の吹付け材等)
②紡織品(布、糸、リボン)
③工場等における防火シールド、耐火服・耐火手袋、温熱パイプ
④船舶のボイラー、居住区等の断熱材、航空機のブレーキ、客室・トイレの不燃材
⑤水道管、電気コード、電線、ロープ、石油ストーブの芯、魚焼きの網、トースター
⑥接着剤、ペイント、紙粘土、化粧品、ベビーパウダー
⑦自動車のブレーキ・ライニング、クラッチ・フェーシング、エンジン周辺の断熱材
⑧薬品工業・食品工業におけるフィルター
などがあります。
アスベストは、特に住宅・学校・駅・高層ビル・工場等の建築物に大量に用いられてきました。
日本で使用されたアスベストはほぼ全て輸入によるものですが、輸入した総量は約1000万トンにもなります。
アスベストによる健康被害
アスベストを吸入することによって生じる疾患には、①石綿肺、②肺ガン、③中皮腫、④良性石綿胸水、⑤びまん性胸膜肥厚などがあります。
アスベストには、古くから知られている鉱物性粉じん固有の危険性と発ガン性による危険性の2つの面があり、これが複合して現れます。
アスベスト疾患の特徴としては、まず一つ目には、アスベスト粉じん曝露開始から疾患の発症までの潜伏期間が長いことがあります。石綿肺では10年から30年、肺ガンでは20年から40年、中皮腫は更に長く20年から50年と言われています。このような潜伏期間が長い疾病はまれです。
二つ目には、肺ガンなどはアスベスト粉じんの吸引量に比例して罹患する危険性が高くなる関係(「量-反応関係」)があると言われています。他方、中皮腫は、このような「量-反応関係」は認められず、ごく少量のアスベスト曝露でも発症することが指摘されています。
三つ目には、予後が極めて悪いことがあげられます。石綿肺には、効果的な治療法がなく、徐々に、あるいは急激に症状が進行し、肺機能が著しく低下するなど日常生活に支障を来し、最期は死に至る重篤な疾病です。肺ガン、中皮腫も効果的な治療法はない上、予後が非常に悪く、短期間で死に至る危険があります。肺ガンの5年生存率は15%、中皮腫の2年生存率が約30%であるとも言われています。